様々な分野の専門家が集い、関東大震災を科学的に検証

2023年8月2日

日本学術会議、一般社団法人防災学術連携体が共催

4つのセッションで、大災害を多角的に分析

一般社団法人 防災学術連携体は、2011年12月に「第1回東日本大震災の総合対応に関する学協会連絡会―今後考えるべきハザード(地震動、津波等)と規模は何か」と題したシンポジウム開催を皮切りに、毎年2~4回のシンポジウムの開催やメッセージの発信を続けています。㋆8日の日本学術会議との共催シンポジウム「関東大震災100年と防災減災科学」が39回目のイベントになります。
基調講演は、名古屋大学の武村雅之教授(地震学)の「1923年関東大震災では何が起きたのか」その後、次の4セッションで真剣な議論が交わされました。
第1セッション「今、関東で大地震が起こったら~過去100年間の社会変容と学術的発展からの展望」
●第2セッション「関東大震災がその後の都市づくりにどのような影響を与えたか」
●第3セッション「震災から日本の災害医療・救護は何を学び、100年でどのように発展したか」
●第4セッション「関東大震災以降、どのように情報通信技術が開発され、社会的な課題が残ったのか」

シンポジウムでは、30名を超える専門家の知見が発表されましたが、「いつ起こるかはわからないが、必ず起こる」首都直下地震、南海トラフ地震などの被害を最小化するために、これらの知見を役立てる必要があります。
各セッションの発表テーマ、発表者は右表の通りです。

防災減災、災害復興推進に多くの知恵を集める

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、学者や専門家の考え方や行動に大きな変化をもたらせました。防災減災や災害復興推進のためには、「学会や専門領域の壁を取り外し、それぞれの専門分野の知識を出し合うことが必要だ」と、震災の2か月後から30学会による学際的連携がスタートし、2016年1月に任意団体の「防災学術連携体」が結成され、2021年4月に「一般社団法人 防災学術連携体」として防災減災、復興推進に衆知を集める体制になっています。
現在、地震・津波・火山・活断層・地球観測・気象・地盤・耐震工学・耐風工学・機械制御工学・水工学・火災・防災計画・防災教育・救急医療・看護・環境衛生・都市計画・農山漁村計画・森林・海洋・地理・経済・情報・エネルギー・歴史・行政などの学者、専門家が所属し、関係する学会・協会は50団体近くになっています。このような学際的な動きを進めて対策を講じていくことが、災害の被害を小さくし迅速な復興の実現につながります。

一般社団法人 防災学術連携体の代表理事で東京工業大学名誉教授の和田章先生の閉会挨拶では、「システムや社会は、設計者や賢い人が考えたようには、実際には動かない。必ず次の災害は起きてしまう。」と締めくくりました。和田先生は、日頃から「人間の知恵と欲望で科学技術は進歩し、世の中はどんどん便利になった。しかしそれは、災害などに直面すると失うものを多くしていることだ」とお話になっています。人間と社会の欲望と抑制の折り合いをつける方法を探す努力が、防災減災、復興の円滑な推進につながるということです。