台湾で発生した大地震から学ぶこと

2024年4月30日

台湾中東部沖でマグニチュード7.7の大地震発生
官民連携した迅速な災害復旧対応には学ぶべき点が多い

4月3日午前8時58分頃(日本時間)に、台湾中東部の花蓮市沖でマグニチュード7.7(気象庁発表)の大きな地震が発生しました。この地震により20人近い方が死亡、行方不明となり、震源に近い花蓮市では5階建てのビル倒壊のほか、多くの住宅に被害が生じました。
台湾ではユーラシアプレートの東端上にあり、東側のフィリピン海プレートとユーラシアプレートがぶつかり合う場所に位置しています。このため、昔から大きな地震が多発しています。1999年9月21日には巨大地震が発生し、大きな被害をもたらしました。
今回の地震では、1999年の地震の教訓を生かした迅速な地震災害復旧活動や、円滑な避難所運営が注目されています。官民一体となった地震災害復旧活動には、学ぶべきものがたくさんあります。

台湾は2つのプレートがせめぎ合う場所
4つのプレートに囲まれた日本と同様の地震多発地帯

台湾は島の西岸はユーラシアプレート、東岸はフィリピン海プレートというプレートの境界に位置します。また東岸の北部では、大陸側のプレートに太平洋側が沈み込み、南部では逆に太平洋側のプレートの下に大陸側が沈み込んでいます。ところが島の東岸沖では2つのプレートがお互いにぶつかり合い、どちらも沈み込むことができない状態になっているため、地震の多発地帯になっています。

近年で最大の被害を引き起こしたのは、1999年9月21日に発生した台湾島中央部を震源とするマグニチュード7.6の巨大地震で「921大地震」と呼ばれています。この地震の被害は、死者2,415人、負傷者11,306人、行方不明者29人、家屋倒壊5万1711棟という大きなもの。中部の南東県では多くの高層住宅が倒壊し、20階建てのビルが基礎から折られて横倒しになった事例もありました。この大地震を契機に建築基準法の見直しが進められ、耐震性を強化した建物が増え始めました。
今回の地震で、震源に近い花蓮市では大きく傾いた9階建てのビルの映像が流れました。このビルは建築基準法改正前の建築物のようで、しかも支える柱が細く、それを補うために多数の鉄筋を入れていました。そのためコンクリートの量が少なくなり、かえって強度が低くなった手抜き工事のようです。
しかし、驚くのは復旧工事のスピードの速さです。放置すると倒壊の恐れが大きく二次被害の危険があるということで、2日後の5日には早くも解体工事が開始されました。この迅速な復旧への動きは、避難所の設営・運営でも発揮されています。

地震発生後3時間で被災者の受け入れを開始した避難所
自治体と民間ボランティア団体の連携の成果

花蓮市の避難所の設営は地震発生直後から始まり、3時間後には被災者の受け入れが開始されました。屋内の避難所ではプライバシー確保のためのパーティションに区切られた空間が家族ごとに用意されています。食料、飲料、タオルなどの生活必需品だけでなく、携帯電話の充電器、携帯電話を持っていない人のための複数の電話機、Wi-Fiなども配備。被災者の身体の健康を保つためのマッサージ師、心の健康をケアする専門家なども揃い、QRコードを読み込みことで、必要なものを要求できるシステムも構築されているとのことです。
日本の令和6年能登半島地震では、避難所を設営し、必需品を揃えるのに1週間以上の時間がかかりました。これは避難所の運営主体が自治体にあり、少ない人数で状況把握、避難者の確認、必需品の手配など多くのことをこなさなければいけないからです。
台湾の復旧スピードの速さは、自治体と民間ボランティアが一体となった「官民連携システム」が構築されていることにあります。多くの自治体では、行政の各セクションと複数の民間ボランティア団体をつなぐ「防災 LINE ネットワーク」が構築され、情報が共有されています。そのため、災害発生後すぐに行政から民間ボランティア団体に必要なものを依頼することが可能です。仏教系、キリスト教系などの民間ボランティア団体は備蓄倉庫を保有し、必要品をすぐに避難所に届けることが可能。復旧支援のための訓練も定期的に行うことでスピード感のある動きができています。
日本でもこのような台湾の活動に学び、災害復旧、避難所運営、仮設住宅の設営など、「どうすれば被災者に寄り添った復旧活動をスピードアップできるか」を話し合い、迅速な対応ができるシステムを構築しておくべきでしょう。