ビル倒壊の原因は・・・?

2024年5月1日

令和6年能登半島地震でのビル倒壊は支えていた基礎杭が原因か?

令和6年能登半島地震(1月1日16時10分頃発生、マグニチュード7.6、最大震度7)の報道で驚いたのは、輪島市河井町の鉄筋コンクリート造(RC造)7階建てビルが横倒しになった映像です。地震に強いと言われていた鉄筋コンクリートのビルが倒れ、隣接した木造3階建ての店舗兼住宅を押し潰し2名の尊い命を奪うという悲劇を生み出しました。多くの専門家が現地を訪れて調査し、次第に倒壊の原因が明らかになってきました。
弊社のグループ会社である㈱三誠の金沢営業所の技術スタッフも現地調査に赴き、倒壊の原因は使用されていた鉄筋コンクリート杭が、地震の激しい揺れで破断したことが一因ではないかと報告しています。

現地調査した専門家の倒壊原因分析
「片側の杭が地中で折れ、反対側の杭が基礎から離れた可能性がある」

当該の建物は、1972年に竣工した鉄筋コンクリート造7階建て(地下1階、現在は埋設)の輪島塗の工場兼店舗の社屋。建物を支える杭の直径は350mmと細く、本数も各柱の下に4,5本。
また近隣の地盤データを見ると支持層は深いところにあり、建設当時の打撃工法では、コンクリート杭を支持層まで確実に打設できるとは考えにくいとしています。
転倒のプロセスは「下になっている側の杭が沈みながら、杭頭および中間の継手部分が折れるなど破壊、反対側の杭と基礎との緊結が弱くちぎれてしまい、支持力を失って転倒したものとみられる」としています。
国土交通省国土技術政策研究所、国立研究開発法人建築研究所の『令和6年(2024年)能登半島地震による建築物の基礎・地盤被害に関する現地報告』でも、「建物は地盤にのめり込むように沈下・傾斜していることから、転倒の大きな要因は基礎・地盤にあったと推察される。基礎の東側の3m以上も沈下した要因として①基礎杭の破壊②埋設地下室の存在③基礎の支持力の問題等が考えられるが、今後の詳細な調査や分析が必要である」としています。

建物の地上部分の耐震補強だけでは不十分
杭などの地下部分の耐震性の見直しも必要

この倒壊したビル近くの他の7階建ての建物も、建物そのものに目立った損傷はありませんが、1階部分が地面に沈み込んでいます。これらの場所には、昔は川や海の埋立地であったという共通点があります。地盤が軟弱なことに加え、強い揺れにより杭が破断した可能性も大きいと専門家はみています。国土交通省も「杭は地下1mほどの場所で折れている可能性がある」と発表しました。
建物の右側の杭が地中で折れると、建物は右側に傾き、左側の杭が基礎から抜けます。支えを失った建物は砂や粘土層の柔らかい地盤に沈み込んで横倒しになったようです。
建物自体の耐震補強はしても、基礎、フーチング、杭などの地下の耐震化は見落とされがちですが、今回のビル倒壊を目の当たりにすると、地下部分の耐震化の必要性を強く感じます。