鹿児島県トカラ列島で群発地震

2023年9月29日

8月中旬からの1ヶ月に震度1以上の地震が約300回発生

沖縄トラフとフィリピン海プレートに囲まれた島々
 トカラ列島付近では8月15日からの1ヶ月間で、1回の最大震度4を含む約300回の震度1以上の地震が続いています。
トカラ列島は、九州南部から大隅諸島(屋久島、種子島など)、奄美群島(奄美大島、徳之島など)、沖縄諸島(沖縄本島、久米島、慶良間島など)、宮古列島(宮古島、伊良部島など)、八重山列島(石垣島、西表島など)、尖閣諸島まで円弧状に連なる「南西諸島」(琉球弧)の一部です。この地域の地震を知るには、南西諸島の成り立ちがカギとなります。

国立研究法人 産業技術総合研究所では、南西諸島の成り立ちを次のように説明しています。「南西諸島はフィリピン海プレートの沈み込みに伴って形成された島弧(琉球弧)の一部で、琉球弧が陸上に露出した部分が南西諸島の島々や沖縄島である。また、琉球弧は西側の火山活動を伴い拡大を続ける沖縄トラフと、東側のフィリピン海プレートが沈み込む琉球海溝という二つの大構造に挟まれている。」
上の図版の真ん中の図にある内海(現在の日本海にあたる部分)の海底にあたるのが沖縄トラフで、これが円弧状の島嶼群とユーラシア大陸を引き裂くように動き、東側ではフィリピン海プレートが沈み込んでいるため、活発な地震活動が起こる地域なのです。

プレートは平坦ではなく、複雑な凹凸がある
 今回の群発地震の震源となっているのは、トカラ列島の悪石島と小宝島付近に集中しています。この地域では、2021年4月からの約1ヶ月間に、震度1以上の地震が264回も発生。同じ年の12月4日からの10日間でも、震度1以上の地震が300回近く発生しました。
海洋火山学者で熊本大学先端科学研究部の横瀬久芳准教授は、「沈み込むフィリピン海プレートの表面が平らではなく海底に『海台』『海嶺』が複雑に連なり、これが引っかかりながら沈み込むので、1度の地震でひずみが解消されずに小さな群発地震が発生するのではないか。7年間に渡りトカラ列島海域の海底地形を調査しているが、横ズレの向きが火山列の向きとは異なっているので、火山性の地震ではないだろう」と見ています。
地震原因が火山活動ではなくても、地震によって岩盤が割れて近くにマグマ溜まりがあれば、マグマの通り道となって噴火が起きる可能性は否定できません。また、横瀬准教授「トカラ列島付近のフィリピン海プレートは、南海トラフ近くのフィリピン海プレートよりずっと以前に形成されたプレートで性質も異なるので、南海トラフ地震とは関係ない」としています。

海底や地下数10㎞で起きているプレートの動きや、マグマ溜まりの状況など、すべてが簡単にみることができない世界で、プレートのひずみやズレが地震を引き起こしています。観測機器を向上させ、多くの学者の知見を重ね合わせることで、地震予知技術の更なる進化を期待したいところです。