宇宙から日本列島のミリ単位の地殻変動を見張る
GEONET(測位衛星連続観測システム)
日本列島は「動かぬ大地」ではありません。常に動き続けています。日本列島は約6億年前、海洋プレートが大陸プレートに沈み込むときに、海の岩石と陸の泥や砂がプレートの境界に溜まる「付加体」をもとに形成されました。
元々はアジア大陸の一部でしたが、約2500万年前、大陸から離れた二つの島が、約1500万年前に再び一つにつながり約300万年前に現在の日本列島の形に近いものになりましたが、それでもまだ絶えることなく動き続けています。
電子基準点観測データは多方面で活用される
このような動きの最大の原因はプレートの移動によるものですが、地震や火山による地殻変動も加わり複雑な変化を生みだしています。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による地殻変動はとても大きいもので、宮城県の牡鹿半島では東南東方向に約5.4mも移動しました。またそれまで、東日本の太平洋側は西方向に年3㎝ほどの動きを続けていましたが、この地震を契機にまったく逆の東方向に動き始め、その動きは現在も続いています。このような動きの変化は、海洋プレートが大陸プレートに沈み込むことによって溜まるひずみが、弾けることによって地震が発生し、その反作用として起こるものです。
30個の衛星と1318の電子基準点で大地の動きを観測
この大地の動きを日々観測しているのが国土地理院が推進しているGEONET(測位衛星連続観測システム)です。上空2万㎞を周回する30個のGPS衛星で、日本列島に約20㎞間隔で1318ヵ所に設置した「電子基準点」の動きをミリ単位で観測しています。このデータを蓄積して分析することにより、地震予知、火山噴火予知の精度を高めることができます。
左表は 2 0 0 0年~2 02 2年の期間にGEONETが地殻変動を観測した93の地震の中で、水平移動距離が5㎝を越える18回の地震をピックアップしたものです。
2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の約 5 . 4mの移動を筆頭に、20 08年の岩手・宮城内陸地震の約1. 5m、2016年の熊本地震の約1m、2003年の十勝沖地震の約95㎝の水平移動など、大きな地震では、驚くべき地殻変動が起きているのです。
このような大きな地震のデータに接する度に、エアー断震システム普及の必要性を強く感じます。