大地震の住宅被害
元旦に起こった令和6年能登半島地震では
住宅の全壊・半壊・一部破壊の被害が6万棟超も発生
2024年元旦の16時10分に発生した「令和6年能登半島地震」は、マグニチュード7.6(最大震度7)という大きなもので、240名の方が亡くなるという悲劇を引き起こしました。発生から40日以上経つ2月9日までに1600回を超える余震が続いています。
今回の地震では、地震動による建物の被害も大きく、全壊・半壊・一部破損の住家被害が起きました。石川県だけでも約6万棟の住家が被害を受けています。地震後から多くの専門家が被災地を回り、被害状況を調査しています。当初、全壊した住家の多くは、1981年より前の旧耐震基準によって建てられたものが多いとみられていましたが、その後の調査で1981年に施行された新耐震基準をクリアした住宅も倒壊していることがわかりました。「耐震基準を厳守して建てられたものなのに何故?」という疑問も湧いてきますが、そもそも「耐震基準をクリアしていれば地震がきても大丈夫」という考え方が間違っているようです。
木造住宅では、より耐震性を高めた2000年基準が定められた
耐震基準とは、「一定の強さの地震に耐えられるよう、建築基準法が定めた最低限クリアすべき基準」です。この耐震基準は大地震が起こる度に見直されてきました。1950年に制定された旧耐震基準では、「震度5程度の中規模の地震で、建物が大きな被害を受けない」という基準でした。ところが1978年にマグニチュード7.4の宮城県沖地震で大きな被害が出たことなどから見直しが行われ、1981年6月1日から新耐震基準が施行されました。これは「震度6強~7程度の大地震でも建物が倒壊しない」という基準です。言い換えれば、壁に亀裂が生じる、配管が壊れるなどの被害があっても、家が倒壊しなければ良しとするものでした。
1995年1月17日にマグニチュード7.3の阪神・淡路大震災により大きな被害が起きたことで更なる見直しが行われ、木造住宅では現行の耐震基準(2000年基準)に変更されました。これは2000年6月1日以降に建築確認申請が行われた建物(木造)に適用されるもので、次の3つの基準が付け加えられました。
①地盤に応じた基礎の設計
地盤調査を行い不動沈下を防げる基礎を作る
②接合部に金具を取り付け
揺れても柱と梁が外れないように金具を使ってしっかり接合する
③耐力壁のバランス強化
柱と柱の間に斜めに筋かいや面材を入れた、地震力、風圧力など水平方向の動きを抑える「耐力壁」をバランス良く配置し、大きな揺れがきて建物がねじれて崩壊することを防ぐ
専門家の見解では、令和6年能登半島地震で、木造2階建ての1階部分がペシャンコになり2階が上に被さっている倒壊の多くは、1981年以前の旧耐震基準によって建てられたものが多く、2階部分が1階の脇に倒れているものは新耐震基準の家であっても耐力壁の配置バランスが悪く柱と梁の接合部がはずれて横に崩れたものが多いだろうとのことです。2000年基準によって建てられた家であれば、このような倒壊は防げる可能性が多かったと言えます。デザイン性や採光を重視することで、南側に大きな窓を造った家などの場合には、耐力壁のバランスに注意することが必要でしょう。
今後、能登半島で倒壊した家を詳しく調査することで、旧耐震基準の家、新耐震基準の家、2000年基準の家の差異が明確になってくるでしょう。しかし、住宅には必ず経年劣化が起きるので、建築時の耐震強度をしっかり保っているかは調査しなければわかりません。また能登半島のように、長期間群発地震が継続した地域では、大きな揺れのたびに建物がダメージを受けて倒壊しやすくなっていることもあるので「2000年基準だから安心!」とは言えません。