千葉県東方沖で相次ぐ地震・・・原因は?
原因は「スロースリップ(ゆっくりすべり)」か?
■この地域では1996年から6回のスロースリップを観測
千葉県東方沖を震源とする地震が、2月末から3月上旬に相次いで発生しました。2月27日~3月12日に発生した震度1以上の地震回数は33回。2月29日にはマグニチュード4.9(最大震度4)、3月1日と9日にも最大震度4の地震が各1回発生し、「大地震の前兆か⁈」という懸念も高まっています。
国土地理院の観測分析で、房総半島のある陸側プレートと、それに沈み込んでいるフィリピン海プレートの境界がゆっくりとズレ動く「スロースリップ(ゆっくりすべり)」が起きていることがわかりました。
千葉県東方沖では過去、1996年、2002年、2007年、2011年、2014年、2018年にスロースリップが6回観測され群発地震が発生しましたが、いずれも2~3週間で収まっています。しかし「今回もすぐに収まるだろう」と安心はできません。
上図は、過去18年間に観測された千葉県東方沖を震源とする震度1以上の地震の発生回数の年別推移を示したものです。スロースリップが観測された2011年、2014年、2018年の地震発生回数は多いのですが、202回の地震が発生した2012年、90回の2013年にはスロースリップは観測されていないので、詳しい因果関係はまだ見つかっていません。2012年、2013年の地震回数が多いのは、東日本大震災の余震も含まれているからです。しかし、東日本大震災の約1ヵ月前と2日前の2回、スロースリップが観測されたことで、地震との関連がある現象だとみられています。現在、世界の多くの地震学者がスロースリップと巨大地震の研究を進めています。
■スロースリップ発生のメカニズム
スロースリップも通常の地震発生メカニズムと同様に、海のプレートが陸のプレートに沈み込むときに、陸のプレートを引きずり込み「ひずみ」が蓄積することにより起こります。下図のように、プレート境界面が固着していると陸のプレートは大きく引きずり込まれ、「ひずみ」が限界に達し固着面が一気にズレると地震が発生し津波も起こります。しかし「ひずみ」が溜まっても断層面の特性などによりゆっくりすべるように動くと、激しい揺れも生ぜず身体にも感じない動きになります。これがスロースリップです。
東京大学地震研究所の小原一成教授と加藤愛太郎准教授は、スロースリップと巨大地震との関連性について次の3つの可能性を指摘しています。
①スロースリップの活動様式が巨大地震とよく似ているので、巨大地震発生様式を理解するヒントとなる
②スロースリップは、巨大地震の発生領域にかかる力の指標となる
③スロースリップが力を加えることで巨大地震を引き起こす役割を果たす
このような様々な計測器、監視システムで空、陸、海中などからスロースリップによる地殻変動を監視しています。巨大地震発生の可能性が高い地域でも複数のスロースリップが観測されています。スロースリップと巨大地震の研究が進むことで、地震予知の精度が高まることを期待します。