免震構造で能登半島の地震を免れた病院

2024年11月29日

三誠セミナーの講演レポート

<令和6年 能登半島地震>

■発生日時:令和6年1月1日16時10分
■マグニチュード:(M)7.6
■深さ:16㎞
■死者:245名
■負傷者:1302名(4月現在)
■被害の特徴
建物の倒壊・破損 火災
津波 地盤崩壊
インフラの被害(複合災害)
交通の寸断
■地震の特徴
活断層連動 地殻変動
液状化 長周期建物共振
杭の被害

本年10月21日に開催された、弊社グループ企業である株式会社三誠主催の第12回三誠セミナーでは、大阪大学名誉教授で現在福井工業大学教授・宮本裕司先生の「大地震の揺れに備える耐震技術―2024能登半島地震と免震応答―」と題した講義が行われました。宮本先生は免震建築の専門家で、地震発生後の1月13日から3日間、日本免震構造協会の現地調査団のメンバーとして石川県各地の免震建物と免震装置の現地調査を行いました。
お話の中で最も印象的だったのは、震度6強の地震に見舞われた石川県七尾市の恵寿総合病院のケースです。同病院は2013年竣工の免震構造の本館と耐震構造の2つの病棟で構成されていますが、今回の地震で耐震構造の病棟では、天井がはがれたり、医療機器点灯や落下が発生しましたが、免震構造の本館ではほとんど被害がなく、被害のあった病棟の患者を本館に移すことで治療を継続することができました。免震構造が、地震被害の最小化に効果的であることを実証する事例でした。

地震に強い社会をつくるために必要な
地盤の3つの「地」と4つの「知」

宮本先生は、過去の大地震から学び、地震に強い社会づくりをつくり上げるために必要なのは「3つの地と4つの知」であるとしています。地震被害の大きさは上図のように「震源×地盤×建物」の連成によって決まるとしています。3つの地とは、地震による揺れの大きさに影響を与える「歴」「形」「質」です。
地歴=その場所が川の流路跡、埋立地などの歴史
地形=扇状地や川の河口付近では軟弱地盤が多く、山地や丘陵地では地盤が固い
地質=固い地盤では揺れが小さく、軟らかい地盤では揺れが大きい

これらの3つを調べることで、地震の揺れの大小、被害の軽重を予測することが可能になります。
この「地盤の3つの地」を含めた次の4つの知が、地震に強い社会をつくるために必要なことだということです。
①地震の揺れをる――海溝型=長周期波、活断層=パルス波
②地盤の3つの地をる(地歴、地形、地質)
③建物の揺れをる――地盤・建物の連成、被害の想定
④地震対策に恵――免震・制振、家族地域連携

先生はまた、今後いつ起きても不思議ではない巨大地震に対し、「現状で基準としている地震動を上回ることは確実で、免震・制振を施していても被害を受けることは避けられない。その巨大地震に対して備えをしておくことが大切だ」と結びました。
2022年9月時点の病院の免震化率は7.9%です。災害拠点病院や救命救急センターに限っても21.4%と低迷しています(厚生労働省調査)。災害復旧の拠点となる公共施設や病院の免震化は、大地震の危険性が高まる現在の喫緊の課題でしょう。