地震調査委員会が巨大地震の発生確率を見直し

南海トラフ、東北地方各地の確率も引き上げ

政府の地震調査委員会は、2025年1月15日の巨大地震発生確率の見直しを行い、今後30年以内に大地震が起きる確率の最新版を公表しました。最も懸念されている南海トラフ地震の発生確率を、これまでの「70~80%」から「80%程度」に引き上げました。
また、2011年の東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震に関しては、東日本大震災と同程度のマグニチュード9クラスの発生確率は「ほぼ0%」としていますが、千島海溝沿いの地震、日本海溝沿いの地震の発生確率をみると安心できるものではありません。地域ごとの地震発生確率は次の通りです。
<千島海溝沿いの地震>
・マグニチュード8.8程度以上の巨大地震:これまでと同じ「7~40%」
・十勝沖地震(マグニチュード8.0~8.6程度):「10%程度」から「20%程度」に上昇
・根室沖地震(マグニチュード7.8~8.5程度):「80%程度」
<日本海溝沿いの地震>
・東日本大震災と同程度(マグニチュード9程度)の巨大地震:「ほぼ0%」
・青森県東方沖地震および岩手県沖北部地震(マグニチュード7.9程度):「10~30%」から「20~40%」に上昇
・宮城県沖地震(マグニチュード7.4程度):「70~90%」から「80~90%」に上昇
・福島県沖地震(マグニチュード7.0~7.5程度):「50%程度」
・茨城県沖地震(マグニチュード7.0~7.5程度):「80%程度」
・青森県東方沖から房総沖の海溝寄りの津波地震等(マグニチュード8.6~9程度):「30%程度」
地震調査委員会の平田直委員長は、これらの発生確率は「(計算上の)数字を丸めて(四捨五入して)表現すると70~80%が80%になったので、確率が10%上がったわけではない」としながらも「いつ地震がきても不思議ではな数字であることには変わらない。引き続きいつ地震がきてもよいように備えていただきたい」と警鐘を鳴らしています。
東日本大震災以降各地で地殻変動を観測
今なお隆起や沈降が続いている
国土地理院では、2011年の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)以降の地殻変動の観測を続けていますが、地震直後に宮城県の牡鹿半島で水平方向に5mを超える地殻変動が観測されたのをはじめ、東日本を中心とする広い範囲で地殻変動を観測しています。その後、「余効変動」(大きな地震の後に、長期間に渡ってゆっくりと進行する地殻の変動)により、牡鹿半島とその周辺では、本震後の10年間で最大約1.5mの変動が観測され、本震から10年間の累積では6mを超える変動になっているとのことです。
また、地震の発生により東北地方の太平洋沿岸で大きな沈降が観測され、牡鹿半島で1mを超える沈降が観測されました。
その後の余効変動により、牡鹿半島とその周辺では、本震後の10年間で50㎝を超える隆起が観測され、10年間の累積では最大約50㎝の沈降となっています。
このような余効変動を引き起こす原因としては、主に「余効すべり」と「粘弾性緩和」という2つのメカニズムが考えられているとのことです。


「余効すべり」は、地震時に大きくすべった断層の延長上で発生するゆっくりとしたすべり、「粘弾性緩和」は地震による力に対応した地下(主に上部マントル)のゆっくりした動きです。この2つのメカニズムにより、ある地域では隆起、別な地域では沈降という複雑な動きが生じているとのことです(右図を参照)。
日本列島の土台は、約3億年前から海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むことで形成された付加体(ふかたい)が寄せ集まってできました。付加体とは、海洋プレートが沈み込む際に大陸プレートに押し付けられてはぎ取られた地質体です。日本列島は、4つのプレートがぶつかる場所にあり、大陸からちぎれたいくつもの破片(付加体)がくっついたものなので、とても不安定な島国なのです。常にいろいろな力を受けて隆起や沈降を繰り返し、絶えず地震が発生しています。「動かぬ大地」ではなく「絶え間なく動き続ける大地」に暮らしていることを忘れずに、地震に対する備えを怠ってはいけないでしょう。